「今年しかない。」
そう気づいた次の瞬間、私はオーストラリア行きの航空券を検索していました。
約1週間後、家族3人でオーストラリアへ向かいます。
息子にとっては、小学生最後の夏休み。そして私にとっては、29歳の自分に会いに行く旅です。
みなさんは「旅に出たい」と感じたことはありませんか。
きれいな景色を見たい人、おいしいものを食べたい人、ゆっくり休みたい人。旅の理由は人それぞれです。
でも、40代後半になった今、私が旅に求めるものは少し変わりました。
それは、「人生を見つめ直す時間」。
海と旅は、いつも私に新しい景色を見せてくれました。そして、その景色は外の世界だけでなく、自分自身の心の中にも広がっていたのです。
40代になると、「旅に出たい」という気持ちには理由がある
40代は、人生の節目を迎える人が多い年代です。
子どもの成長、親のこと、仕事の転機、自分の体力や健康の変化。
毎日忙しく過ごしていると、「このままでいいのかな」と立ち止まりたくなる瞬間がありませんか。
私自身、この夏、大きな決断をしました。
日本語学校の常勤講師を退職し、フリーランスという新しい働き方を目指すことにしたのです。
決断の理由は一つではありません。長年勤めた学校を離れる不安も、フリーランスとして安定収入を失う怖さも、正直ありました。
でも、その中には「今年だけは仕事よりも息子との時間を大切にしたい」という思いがありました。
子どもと一緒に過ごせる夏休みには限りがあります。小学生でいられるのも、あと数年。息子が「お母さんと旅行に行きたい」と言ってくれるのも、今のうちかもしれません。
「いつか行こう」ではなく、「今年行こう」。
その小さな決断が、今回の旅の始まりでした。
あなたにも、「今年しかない」と感じた瞬間はありませんか。
子どもの成長、親の年齢、自分の体力。そのタイミングは、誰にでも訪れるものだと思います。
湘南の海が教えてくれたこと ― 20年通い続けて見えたもの
私は20年以上、湘南の海に通っています。
サーフィンを始めたばかりの頃は、少しでも波に乗りたくて通っていました。
妊娠・出産で海から離れた時期もありました。
でも、南風が吹くと、自宅の付近にも潮の香りが漂い、海の存在を感じられる。
3年10カ月の休暇期間を経て、サーフボードを片手に鵠沼の海に向かった時のことは今でも鮮明に覚えています。
あまりにも何も変わっていなかったからです。
海に入っているのは、様々なレベルのサーファー。サーフィンスクールの人達。
浜辺で犬と散歩している人。サーフィンをする人たちを眺めながらコーヒーを飲んでいる人。
ビーチバレーをする人。子どもと一緒に砂浜で遊ぶ人。
そんな、ありふれた景色は、海に来るのが久しぶりの私に「おかえり」と言ってくれたようでした。
でも、海そのものは毎回違う表情を見せてくれます。
穏やかな日もあれば、大きな波が立つ日もある。同じ場所なのに、二度と同じ景色には出会えません。
だからこそ、海へ行くたびに思うのです。
「人生と同じなんだな」と。
私たちは毎日を繰り返しているようでいて、本当は同じ日は一日もありません。
仕事がうまくいく日もあれば、思うようにいかない日もある。子育ても同じです。昨日通用したやり方が、今日は通用しないこともあります。
海は、そんな「変化し続けることが普通なんだ」という感覚を、20年かけて私に教えてくれました。
旅にも、それと似た力があります。
普段とは違う景色を見て、違う空気を吸い、違う文化に触れる。
それだけで、心が少し軽くなることがあります。
私は旅を「現実から逃げる時間」だとは思っていません。
むしろ、日常をもっと大切に生きるために必要な時間だと感じています。
旅先から帰ってくると、不思議なくらい見慣れた景色が違って見えることがあります。
変わったのは街ではなく、自分のものの見方なのです。
近くに海がなくても構いません。あなたにとって、心が落ち着く場所はどこですか。その場所に、しばらく足を運んでいないということはありませんか。
オーストラリアは、29歳の私の人生を変えた場所
今回の旅先に選んだのは、オーストラリア。29歳の私が、自分の人生を見つめ直した場所です。
当時の私は、「このままでいいのだろうか」と悩みながら毎日を過ごしていました。
仕事にも慣れ、結婚して新居も構え、生活は安定していたはずなのに、なぜか心のどこかにモヤモヤを抱えていたのです。
そんな中で選んだのが、ワーキングホリデーという道でした。
正直、渡航を決めるまでには何度も迷いました。年齢のこと、夫のこと、貯金のこと、周囲の反応。
すべてが後押ししてくれたわけではありません。それでも「今、行かなければきっと一生後悔する」という気持ちが、最後には勝ちました。
現地に着いてすぐ、私は自分の英語力のなさに直面しました。簡単な注文すら思うように伝えられず、悔しい思いをしたこともあります。
それでも、語学学校に通い、サーフィンをして、仕事もして、海辺の町で過ごした日々は最高に楽しかった!
特に、色んな国の、色んな年齢の人に出会い、つたない英語で様々な話をしたことで、私の価値観が変わっていった。
食事のマナー、働き方、家族との距離感。自分の中の「常識」が、他の国ではまったく違う。
「あたりまえ」だと思っていたことが、世界では「あたりまえ」ではない。
その経験は、私の視野を大きく広げてくれました。
そして、そのとき芽生えた異文化への興味が、日本語教師という仕事につながり、今目指している外国人材の支援という仕事にもつながっています。
当時は、そんな未来を想像していたわけではありません。
ただ、「行ってみたい」という気持ちを大切にしただけでした。
今振り返ると、人生を大きく動かした出来事は、いつもそんな小さな気持ちから始まっていました。
あなたにも、「あの経験がなければ今の自分はいなかった」と思える場所や出来事はありませんか。
人生を変えたのは、大きな決断ではなく小さな「好き」
思い返してみると、私の人生には旅が何度も登場します。
13歳で初めて海外を訪れた夏。「世界は思っていたより広い。」
そんな感覚を初めて知りました。
26歳では、母とのタイ旅行が止まっていた時間を動かしてくれました。
語学や異文化に興味があったのにその道に進めなかったことから、私は海外そのものを意識的に避けていました。
でも、結婚を前にして母と訪れたタイで、眠っていた”海外への思い” を確かに感じたのです。
そして、29歳でオーストラリアへ。
どれも、その瞬間に人生が劇的に変わったわけではありません。
でも、それぞれの旅で感じたことや出会った人、見た景色が、自分の中に少しずつ積み重なり、今の私をつくっています。
だから私は、「人生を変えるのは大きな決断だ」とは思いません。
「海外移住をしよう。」「会社を辞めよう。」
そんな大きな決断よりも、
「行ってみたい。」「見てみたい。」「また海を見たい。」
そんな小さな「好き」の積み重ねが、気づけば人生の方向を変えているのだと思います。
40代だからこそ、旅に出よう
40代になると、新しいことを始めるのは勇気がいります。
仕事も家庭もある。時間もお金も限られています。
だから、「今は無理」と思ってしまうこともあるでしょう。
でも私は、40代だからこそ旅に出る価値があると思っています。
旅は、何かを成し遂げるためのものではありません。
自分が本当に大切にしたいものを思い出すための時間です。
海外でなくても構いません。
隣の県へ出かけるだけでも、海を見に行くだけでもいい。
日常から少しだけ離れることで、心の中に新しい風が吹くことがあります。
その風が、「次はこんなことをやってみたい」という気持ちを運んできてくれるかもしれません。
もし今、旅に出るための一歩を踏み出せずにいるなら、何があなたを止めているのか、少しだけ考えてみてください。
まとめ|旅のあと、見える景色は少し変わる
もうすぐ、私は再びオーストラリアへ向かいます。
29歳の私が歩いた場所を、今度は家族と一緒に歩く予定です。
きっと街は変わっているでしょう。私自身も、あの頃とは違います。
でも、一つだけ変わらないものがあります。
それは、「旅は人生の景色を変えてくれる」ということ。
人生は、大きな決断で変わるとは限りません。
「今年行こう。」
「海を見に行こう。」
「やってみたい。」
そんな小さな「好き」を大切にした先に、新しい景色が待っていることがあります。
もし今、「このままでいいのかな」と感じているなら、まずはあなたの心の中にある小さな「好き」に耳を傾けてみてください。
その一歩が、未来のあなたを少しだけ違う場所へ連れて行ってくれるはずです。